星の原休憩所

映画、アニメ、読書など、趣味の感想記録です。

「最終兵器彼女」第6話「クラスメイト」

この作品のゆったりとした動きのドラマが好きだ。高校生たちのありふれた恋模様を含む日常生活を丁寧に切り取りつつ、少しずつ、暗い戦争の影をにじませている。

平和なのはこの街だけ。この町はちせによって守られている・・という不吉な影。
この構図がいいよね。
実際、自分が今いる現実だけが平和で、「外」のことは何も知らない。
TVに映し出される他国の戦争の映像もどこか他人事として見ている我々にとって、この物語の描いている構図がどんなにおそろしいことか。

現実に戦いが起こったときに、愛する人を守るために我々に何が出来るのか?
戦争に行って人殺しをするのか? 出来るのか?
この問いかけはおそろしい。けど、ほんの数十年前に世界中で人間はその選択を迫られたんだよね。そして、戦いに行った人がいるという事実。

戦争を描いたドラマは多いのだけど、彼女が最終兵器というずいぶん破天荒な設定にしたおかげで返って物語を虚構として見ることができるし、そのくせ物語が破綻しないのは日常描写のリアリティがありすぎるほどあるから。特に各キャラクターの心理表現は見事だ。

原作者のアイディアの勝利だと思う。

一方で、アニメの方も原作の匂いをちゃんと守りつつ、芝居をやっているから、よりリアルなドラマとして楽しむことが出来る。

物語がどんな結末を迎えるのか、興味深く見守りたい。

おまけ。今思いついたんだけど、この作品は昔の「超時空要塞マクロス」と対極にあるような気がした。
あれは戦争を描きつつもそれは見せかけだけで、実のところは若者たちの平和な恋愛模様を描いただけの作品だったので、そこには人が死んでいくこと、人殺しをすることの重さがなかったから。見せかけだけの戦争。見せかけだけの兵器の格好良さを描いていたような気がしたから。

だから私は、自分に都合のいいときだけ「戦争で人が死んでいっているのにそんなことを言うもんじゃない!」とミンメイを打った一条輝が大嫌いだったんだけど・・。(劇場版「マクロス」より)

とは言え、「マクロス」が大ヒットした平和だった80年代に比べると、21世紀に入った現在の我々はぐっと重い危機意識の中にいるのかも知れない。先の見えない未来に対して漠然とした不安を抱いていない人もいないのではないかと思うから。

そういう意味で、シュウジの不安は、私と共鳴するのかも知れないなあ・・と何となく思った。