星の原休憩所

映画、アニメ、読書など、趣味の感想記録です。

「ユージニア」 恩田陸

小説・一般9.「ユージニア」 恩田陸 角川文庫

北陸のK市で起きた大量毒殺事件をめぐるミステリー。犯人は誰なのか? 動機はなんだったのか? いろんな人の証言をめぐって、考えさせられていく物語で、人は、自分のイメージで犯人像を作り上げてしまう・・・というテーマの部分はわかるし、こういう独特の構成も面白いと思ったんだけれど、なんか割り切れないのは、この事件とはまったく関係のないところで死んでいる人が、一人いることなんだよね。

古本屋の裏にすんでいた一人暮らしの老人。この人が死ななければならなかった理由は、あまりに理不尽で、本当に殺されたのかどうかが微妙ではあるんですけど、そんな理由で人が人を殺しちゃいけないでしょ? と思っちゃって、私は、どうもそこで引っかかったんだわ。これが殺人なら、この犯人を許すことはできません。

最初の毒殺事件も、もちろんひどいものなんだけれど、これの動機はなんとなくわかる気もしたんだ。なんとなくだけどね。でも、この老人は、完全に事件とは無関係だったはずだ。無関係の人間を、たまたま古本屋の裏にすんでいたと言うだけで、巻き添えに殺したのなら、それは許されることじゃないと思いますよ。

こういう無茶な展開を、物語の雰囲気でごまかしてしまっているのが、なんか気に障る。こんな雰囲気作品にマジで怒っても、詮無いことなのはわかるんですが・・・。