星の原休憩所

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「風雲児たち 幕末編」第5巻 みなもと太郎

コミック9.「風雲児たち 幕末編」第5巻 みなもと太郎 リイド社SPコミックス

ペリー艦隊、2回目の来訪が描かれる。その部分の記述だけを抜き出してみます。

年明け早々、嘉永七年(一八五四)一月一六日、あまりにも早すぎるペリー二度目の来航である!!

「そ・・それも九隻だと!?」
「前回の倍以上ではないかっ」
「ア・・アメリカは本気だっ」

ペリーがやって来たのは214日ぶりのことであり、プチャーチン長崎港を去った日から数えると、まだ八日間しか経っていないのである!
帰ったと思えばまた現れる。あまりにも目まぐるしい西洋船の出没であった!

会見地の交渉が始まった。今回もペリーは姿を見せず、交渉はすべてアダムス参謀長と行われた。
「会見地は鎌倉を用意いたしました。すでに半年前より設営を進めており、変更は不可能でござる。鎌倉で何卒ご了承いただきたいっ」
「前回より遠いカマクラに行く気はまったく無いっ この神奈川を去れというなら、我々は再び、江戸に入港するッ」
すでに品川沖まで入りこまれ、礼砲のデモンストレーションを見せつけられた後では、この神奈川まで引き返してくれた事で諒とする他なかった・・・

「では神奈川のどこかに会見場を定めるが・・・」「その地の決定、準備まで少々時間をいただきたい」
「承知した。できるだけ早くお願いする」
「と言いつつ、神奈川周辺をあちこち偵察しております」
「時間をかければ不利になるばかりだ。候補地は見つかったのか?」
「漁師小屋が八十軒ほどの横浜という漁村がございます」

浦賀に設営されていたすべての物資が横浜村に運ばれ、改めて設営されるまで二十日あまりかかり、その間、ペリー艦隊は二隻増えて、十一隻となっていた。

かくて、投錨から二十四日後の二月十日(太陽暦3月8日)威風堂々ペリーは横浜に上陸した!!

ペリー率いる武装兵、士官の数は総勢五百に及ぶ。

まずペリーの要求したのは、漂流民の保護である。
「日本はこれまで自国民の漂流民も受け取らず、漂着した西洋人を罪人のように扱ってきた」
「これは国際法上も人道上も許されぬ所行である」
「今後もこのようなことを繰り返すなら、我々は戦争も辞さない!」

「今後、難民の保護を約束してくれるなら、それ以上は問わない。食料や燃料の補給も叶えてほしい」
「緊急事態においては、これまでもそうしてきたし、今後もそうすることを約束する」
「緊急時だけでは困るのだ。我々は、恒常的な補給基地をこの国に求めているのだ」
「アメリカ船がいつでも立ち寄れて、上陸・補給のできる港を日本が数カ所開いてくれることを望む!」
「お断りする。港を開くとは、すなわち開国であり、それは出来ぬ。ただ、貴国が熱心に大統領親書を届けてこられたから、そのお気持ちを尊重して、横浜で応接しているのだ」
「古来、我が国が開いている港は長崎のみであり、国交をもっているのは、オランダと中国の二カ国のみである」
「しかし、貴国が強く望むのであれば、将来においてアメリカをこの二カ国に加えてもよい・・・これが我々の示す最大の友好であり、譲歩である」

「開国とは、国と国が自由貿易を行うことだッ むろん我々はそれを望むし、日本にとってもそれが一番良いことだと考えている。しかし、それは将来の課題とし、今はそこまで要求しないっ」
「長崎はアジア通商の航路から離れており、はなはだ不便である」
「アメリカ人が自由に歩け、必要な物が買える土地を、この国の太平洋側に五,六カ所開いてくれるだけで良いのだ」

「貴国の意向に従い、来年早々より長崎にて航海必需品のみの交易を許可する。また五年後には要求どおり、長崎以外に港を一つ開く」
「ただし、二港とも自由行動は許可できない。これが最終的譲歩である」
「話にならんな、いったいどこの港を開くのかね?」
「左様、松前あたりが候補地であるが・・・」
「どーして、日本の端っこばかり、もってくるのだ〜」
「確かに蝦夷地は重要だから、二つ三つ開いてほしいが、本州、それもこの付近にどうしても港が必要だ。この要求をのまない限り、私は本国に帰れないっ」

「仕方ない。交易については今後の課題とするか・・・」「私の目的はアメリカ人航海者の安全を守ることだ」
「そりゃ、捕鯨組合がそもそもの支援団体ですから・・・」
「二兎を追う者は一兎をも得ずだ・・・通商条約を見送るかわりに、和親条約はこちらの要求を最大限呑ませてやる!!」

結論を先に言えば、ペリーの作戦が正解であった。アメリカが交易要求をスンナリ撤回したことで、幕府の彼らに対する好感度は一挙に上がったが、同時に和親条約を断る理由がなくなってしまったのである・・

基本的にペリーの要求はほとんど受け入れることになり、あとは細かい部分で抵抗を示す他はなかった・・・
開港地は、蝦夷の箱舘と伊豆下田の二カ所。
アメリカ人の自由行動地域は、海岸より半径十里(約四十キロ)の要求に対し、半径七里(約二十八キロ)に狭めるのが精一杯であった。

風雲児たち (幕末編5) (SPコミックス)

風雲児たち (幕末編5) (SPコミックス)