星の原休憩所

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「関東大震災」 吉村昭

読書49.「関東大震災」 吉村昭 文春文庫

とても厳しい内容で、読むのがだんだん辛くなってきて、苦しかった。しかし、こういう現実から、目を背けちゃ行けないんだと思う。

震源地は相模湾で、神奈川県の被害も甚大なので、見知った地名がいろいろ出てきて、列車の脱線事故がどこで起きたのか、詳しく書かれているのは興味深かった。

東京で死者が多いのは、本所被服廠跡で起こった火災旋風のため。2万430坪の広大な敷地が空いていたので、避難民が大量に押し寄せて、そこに旋風が巻き起こり、荷物を吹き飛ばし、その荷物に引火して、逃げまどう人たちで、潰され、焼け死に、そこだけで3万8千人が犠牲になったと記録されている。(全体では20万人の死者なのでおよそ5分の一がここで亡くなっている)

流言による朝鮮人大虐殺の記録、軍人による社会主義者の夫婦(及び彼らが連れていたまだ6歳の甥)の殺人事件(大杉栄事件)なども、丁寧な解説があった。

最初と最後に、震災を予知した地震学者二人の対立が描かれていて、今後に起こりうる震災を警告すれば、人々が必要以上に怯え、世の中の不安を煽るだけだと、そんなことは起こらない、起こっても被害は最小で済むときっぱり断言した学者。最悪の事態の予測が、まさにそのまま的中した学者。二人のドラマで締められていて、これも、今に通じるテーマとして読むことができたと思う。未来予測の発表は、非常に難しいと。

関東大震災 (文春文庫)

関東大震災 (文春文庫)