星の原休憩所

映画、アニメ、読書など、趣味の感想記録です。

「夜のピクニック」 恩田陸

小説・一般16.「夜のピクニック恩田陸 新潮文庫

恩田陸というと、ホラー系のちょっとこわい小説を書く印象があったんだけれど、これは本当にちょっとさわやかな感じのする青春小説でしたね。

恩田陸らしい、イメージがきれいでリズム感のある文章なので、なんだかぐいぐいと読まされました。主人公たちと一緒に一日歩き通したような気分。日中の暑さも夜の静謐さも一緒に感じながら読み進めることができました。

一番よかったのは、やっぱりキャラクターかな。特にアメリカにいる杏奈という少女がよい感じ。作中では、「そこにいない少女」として回想で語られるだけなのに、すごい存在感だ。「去年、おまじないをかけておいた」という謎の手紙を残しているが、そういう演出をするところが、恩田作品の魅力なんだろうなあ・・・と思った。

他にも作中の人物がすごく魅力的に書かれていて、印象に残りました。甲田貴子、西脇融の二人を主人公に描かれているけど、彼らを取り巻く友人たちがみんな素晴らしい。悪役(?)として描かれる少女までも魅力的だと思いました。彼女の落ちの付け方もこう来るか・・・とラストで頷いた感じ。

友人たちの協力によって、ぎくしゃくしていた関係が修復される物語・・・とまとめてしまうのは簡単だけれど、そこへ行くまでの過程がずっと緊張感を伴っていて、私にしては結構夢中になって、一気に読み上げました。面白かったです。